受講者の声

「学生がプレゼンテーションを学ぶ意義」

神奈川工科大学 飯田教授

飯田教授

神奈川工科大学 応用バイオ科学部 応用バイオ科学科では、有志の学生でチームを編成し、世界的な合成生物学の大会「iGEM (The International Genetically Engineered Machine Competition)」に毎年参加しており、チームメンバーの大学2年生、3年生にiDenセミナーに基づいた「英語プレゼンテーション」のレッスンを実施しました。
その成果について担当教授の飯田先生にインタビューさせていただきました。

Q:貴校iGEMチームのパフォーマンスについてのご感想を聞かせてください。

非常に高いレベルのプレゼンテーションができたと思います。 「英語のプレゼンテーション」なので、帰国子女を起用している参加校もありました。もちろんネイティブ並みの英語です。しかし、彼らのプレゼンテーションには「自らの経験」が伴っていません。
それに比べ、わが校のiGEMチームのみんなは、自分たちで苦労しながら実験を繰り返したという「実経験」に基づいた「伝えたいこと」があって、それをもとに自分たちでプレゼンテーションを組み立てて作り上げているわけです。ただ単に「英語が上手」だから伝わる、というものではないということを改めて感じました。 発表資料も、自分たちが理解した内容について「何を伝えたいか」「何が重要か」を自分たちで考えて精査した結果、とてもわかりやすい資料になりました。

飯田教授

Q:チームの学生さんたちの感想を聞かせてください。

英語でのプレゼンテーションを経験して、「すごく楽しかった!」「もっと上手になりたい!」と言っていました。
今まで、「プレゼンテーションを練習する」ということに対して明確な評価基準やフィードバックがなかったわけですが、今回、「意識すべきこと」や「ゴール」、つまり、何がよいのか悪いのか、できるできない、という「判断基準」がはっきりしたことで、「上手にできるようになりたい」という目標を持つことができたと思うのです。それが、目的に向かってもっと練習しようという意欲につながりました。練習すると上手になるから「足りない所」が見えてくる、そこをどうしようかと考える、その繰り返しの相乗効果です。「英語だからこのレベルでいいや」ではなくて「このレベルを英語でやりたい!」というモチベーションとなったのだと思います。達成度を評価できることに大きな意義がありましたね。

Q:貴校の今後のiGEMチームに期待することは?

自己実現、自分の夢に向かって自分を高める、チャレンジ精神を忘れずに、努力、挑戦してもらいたいと思います。

Q:今回のレッスンは役に立ったと思いますか?

もちろんです。過去と比べて、プレゼンテーションはまったく違っていました。 まずレッスンを受けるための準備が必要になり、その準備のために事前に自分たちで練習をしました。その上でレッスンを受けて、何を目標にすればよいか、何ができるようになればよいか?という点について、目指すべき目標がはっきりしたのです。そのため、彼らは高いモチベーションを維持しつつ練習のために時間を費やす努力ができたのです。大会本番までの時間の使い方が変わったのだと思います。
たとえば昨年は、会場入りした直後に実際の会場を見た後、さて原稿どうしよう・・、そこから一晩徹夜して原稿を読む練習をする。一昨年は、開催地に向かう道中でようやく原稿準備に取りかかる・・。発表では原稿を読むのが精いっぱいで、原稿がなかったら何も話せないわけです。
今回は、事前に練習を重ねて、話すべきことがしっかりと頭の中に入っていて、自分の英語で伝えたいことを伝える、それができるという自信を持って会場入りできたと思うんです。

ちょっと余談ですが。 本番直前、あと数分後に自分たちの番だ!というタイミングで、学生たちが「あ、そう言えばまだ発声練習してないよ!!」と、レッスンでやった発声練習をイメージトレーニングしはじめたのです(周囲には大勢の人がいましたから実際に声は出せませんでした)。まるで、これやっておけばうまくいく!というおまじないのようでした。僕が思う以上に、彼らにとっては意味のあるレッスンだったんですね。レッスンで学んだことを大切に思ってるんだなって感じました。

Q:大学生がプレゼンテーションの技術を学ぶ意義について聞かせてください。

プレゼンテーションとは、それまで努力してきたことの最後を締めくくる場です。
そのクオリティを高く設定できることで、実験の中身や結果をより深く理解しようとする意識が高まると思うのです。よいプレゼンテーションには表現の技術が必要ですが、コンテンツの深い理解があってこその表現力です。この二つが組み合わさることによって、日々の努力に対するモチベーションも高まるのだろうと思います。

Q:ところで飯田先生の研究室では「ビデオ撮り」が流行っているそうですが?

そうなんですよ!先日も4年生の卒論の中間発表を控えて、みんなビデオで撮り合ってて、立ち方や目線などを指摘し合ってたんですね。ビデオで見れば、やはり自分自身で気づく部分がたくさんあるんですね。結果的に皆の中間発表は、プレゼンテーションとしてはとても上手だったんですよ。

Q:飯田先生の考える「よいプレゼンテーション」とは?

サイエンスの世界では、まず「本質を正しく伝えられる」ことが基準になります。誇張でも矮小でもない、「真実」を伝えることが大前提ですから。それに加えて、人によって受けるイメージが異なる「言葉」だけでなく、ビジュアル情報を活用して統一した概念を共有できることが重要です。そうすることで、価値観や分野の異なる人々にも自分たちの成果や価値を新しい情報として伝えることが可能になり、情報交換ができるようになる、それが将来的な可能性やコラボレーションにも繋がっていくわけです。 コミュニケーション・ツールとして機能する、それがよいプレゼンテーションなのだと思います。